隔離4日目 - 健康を買う男
4日目・朝食
ホットケーキは言わずもがな巨大。ホテルの厨房で1つ1つ焼いているとしたらさぞ効率は低かろう。
クロワッサンには必ずしもバターを使うわけではないので、使われなかったものが冷蔵庫にストックされていく。
4日目・昼食
巨大な鶏もも肉。今日はシェフのやる気がない日だろうか。
やたら辛いBBQコーンスナックは夕方の小腹を満たしてくれた・・この際、ポップコーンの弾け残りのような硬い食感には目を瞑ることにしよう。
4日目・夕食
巨大な白身魚・・と言いたいところだが、これくらいの切り身は日本にもある。
マンゴーケーキは甘みがしつこくなく、美味しい。ホテルビュッフェに置いてあれば2,3回は取ってくる味だ。
所感1
食事の支給やゴミの回収は決められた時間帯に行われるのだが、例えば夕食が17:30-19:30と記載されているところで、17時台に届けられたことは1度もない。
19時を少し過ぎて支給されれば良い方だ・・
今日は間もなく20時を迎えようかという頃にようやく自室のドアがノックされた。当然釈明の言葉もない。
ありがとうと室内から伝えて、指示されたとおり30秒間待ってから、ドアの前に置かれた紙袋を回収する。
スタッフの皆様、模範囚に対する待遇はもう少し見直してもいいのでは?愛をこめて、940号室より。
所感2
それより、今日のビッグニュースは隔離期間中の新たな友人を得たことだ!
初日からレンタル業者と連絡を取っていた、エアロバイクがようやく自室に届いた。
2週間弱のレンタルで、日本円にして約15,000円。
この土地の物価の高さを考慮しても割高なことには間違いないが、健康を買えると考えれば安いものだ。
これである程度の脂肪を燃焼させた上で日々の食事を楽しむことができる・・
全く運動がない暮らしをしていると、食事の時の罪悪感というか、本当にまずいんじゃないか感が拭い切れないのだ。
日本での在宅勤務時であれば退勤後、近くの公園で体を動かしたりしていたが、軟禁状態の今、運動による消費エネルギーはほぼゼロに近しかったろう。
ということで空き時間を見つけた際は勿論のこと、会議中でも躊躇なくペダルを漕いでいる。
何人かのメンバーは、この男はなぜ自らの発言時に息を切らしているのか、疑問に思っているに違いない。
隔離3日目 - イギリス式ビンゴ
3日目・朝食
ハーフカットトマト。昨日夜の巨大ブロッコリーといい、この国には「食べやすく切る」というアイデアはない。
クロワッサンもホテルのレストランで食べれば格段に美味しいだろうに。
安いビジネスホテルの朝食ビュッフェが今は愛おしい。
3日目・昼食
バゲットサンドイッチ。
仏系ホテルチェーンであるため所々にその要素を散りばめてくる(全ての書類がBonjourから始まったり)。
味は美味しいが、顎が疲れるだけなので2度と出さないでほしい。
3日目・夕食
ビーフシチュー。美味しい。
米を食べたい・・が、既にカロリー過多気味の体には危険すぎる。
夕食には必ずデザートを付けてくれており、甘党の私には大変ありがたいのだがこれも同様だ。
この日のデザートはヌガーがたっぷりかかったチョコレートケーキ。歯が溶け崩れていく音が聞こえた。
所感
この隔離ホテルは宿泊者ができるだけ退屈しないように、いくつかのイベントを用意しているようだ。
この日行われたオンラインビンゴ大会もその一つであり、朝食の入った紙袋に案内が同封されていた。
・・・が、私が知るビンゴゲームの用紙とは全く違う。
どうやらイギリス式のフォーマットで、ハウジーと呼ばれるそうだ。
こんな所にも統治の歴史を見るとは・・
なお、急遽会議が入ってしまった影響で肝心の景品の中身を知ることができなかった。
凡そアルコールか、今晩のディナーのデザートを増量しますよとか、そういった類だろうと想像するが。
何にせよ、こうした配慮をしてもらえるだけでも有難い。
アデレードで隔離生活を送った人の話を聞くと、ネット環境も室内設備も整っておらず、極めて不快な2週間だったそうだ。
これは地域格差以外の何物でもなく、そして個人では如何ともし難い部分だ・・
今回は幸運に恵まれたことを感謝したい。
隔離2日目 - イランから来た逃亡監視員
2日目・朝食
クロワッサンはそこそこ。
シリアルはボソボソしておりグラノーラと呼ぶには味気ない。
普段ならバナナ1本で済ませているところを、これだけの量の朝食は久しぶりだ。
2日目・昼食
蒸したサーモンにグリーンピース。
魚が食べられるのは嬉しいが、割り箸を持参していないことに気づいた。フォークで食べる魚は食べづらい。
食事と共に数独が配られたがこの時代にどれだけの暇つぶしになると思っているのか?
ランチョンマットにして捨てた。
2日目・夕食
焼き鳥に見えるのは串に刺さったラム肉。好んで食べないが、これは柔らかくて美味しい。
人によってはお金を払って食べるくらいなのではと感じるほど。
この国ではワニも食うらしいが、さすがにそこまで思い切った配給はしないだろうか。
所感1
ホテルの形状はパノプティコンさながら、中庭を囲んで大きなU字を描くように作られている。
このためほぼ全ての部屋の窓辺を伺うことが可能なのだが、この日気づいたことが一つ・・・
ベランダに出ている宿泊客がいる!
部屋から足を踏み出すことはおろか、窓を開けることすら許されていない自室と比べてこの待遇の差はなんだ?
いくら快適なホテル暮らしと言えど外気を取り込めないことはストレスフルであり、多少の金なら出すからベランダ付きの部屋に移動させてくれと言いたい。
同じタイミングでチェックインした家族連れがいたが、子供がいればなおさらだろう。あの子の部屋は外に出ることを許されているだろうか。
所感2
上述のとおり、隔離期間中は食事を受け取るときやゴミを出すときを除き、部屋の外に出ることが一切許されていない。
*チェックイン時、ルームカードは?と天然で聞いてしまい、あなたには必要ないわと気まずそうに告げられた。
この体制を守るため部屋のドアを開けた先には監視員が座っているが、聞いてみたところ警備会社スタッフとのこと。
今年に入ってから隔離ホテルにおける仕事が割り当てられるようになったらしい。
前日まで座っていたのはインド系の若い男性。
挨拶をしても元気に返してくれるわけではなく、ああ、日本にもこういう一時労働者はいるなと思い、それ以上のコミュニケーションは諦めた。
あるいは隔離対象者と不必要な会話をするなと指示されているのかもしれないが。
対照的にこの日の監視員は朗らかでよく喋ってくれる。
名はサイードと言い、ロシア人の父とトルコ人の母を持つ、イラン生まれの明るい青年。
朝に5分ほど半開きのドアから会話をし、いい気分になって部屋に戻ったが、昨晩遅くまで部屋の外から男性の声が響いていたのを思い出した。
サイード、勤務中に家族に電話とかしてないよな?あれはなかなかうるさかった。
しかし人と直接喋ることは本当に重要だ・・
毎朝のヘルスチェックと、日中連続するウェブ会議のみでは人間らしい暮らしとも呼べたものではない。想定外の友人を得たことに感謝した。
できることならハグでもしたいが、生憎私たちの間には2メートルの見えない壁が立ちはだかっている。
隔離1日目 - 初日を過ごした所感
1日目・昼食
鶏肉と野菜の炒め物と、恐らく日本米。
青リンゴはパサパサしていて味気ない・・
1リットルの牛乳は1食分なのか、1日分なのか分からない。
1日目・夕食
ウェルカムディナーなのか、巨大な(半分に折り畳まれており写真の2倍の面積がある)オージービーフステーキ。非常に硬く噛み切るのに苦労した。
右手前、米がない分豆腐でも付けてくれたのか?と思い一口齧ったところチーズケーキ・・
ティラミスを先に見ていた分、まさかデザートを2種出してくるとは予想できなかった。早くもカロリー過多が懸念される。
所感
隔離ホテルは当局指定であり完全にくじ引き・・だが、大当たりだと思う。
日本のビジネスホテルの2倍ほどの広さに、クイーンベッド(枕が4つあるが全て同じ質感。種々取り揃えないのはどういうことか)にオットマン付きソファ。
何よりネット環境が快適なこともあり不便はほぼ感じない。
人によっては2週間、部屋から1歩も出られないことを苦痛に感じるかもしれないが、自分には問題ないだろう。
窓を開けることも許されていないので、せっかくの好天をガラス越しにしか味わえないことが恨めしい。
諸々差っ引いてもこの2週間、基本的には快適に過ごせるだろうなと楽観視しつつ、日本人には十分すぎるほど大きいベッドに身を沈めた。
隔離1日目 - 出入国とチェックイン
出国
羽田空港における特筆事項はPCR検査のみ。
検体提出から結果受領に4時間要したのが計算外だったが、特に滞りなく手続きは完了した。
時間に余裕があれば出発ターミナル以外での受診を検討してもいいかもしれない。
入国~ホテル到着
羽田から10時間弱のフライトを経て、シドニー国際空港に到着。
ここにおいても簡単なヘルスチェックを挟んだのみで、平時の入国手続きと何ら変わりない。
全ての審査を完了し外に出ると大型バスが待ち構えており、1時間ほどかけて隔離ホテルまで連行される。
到着後の車内で更に1時間待たされた後、4名ずつ降ろされチェックイン手続きを取る。
車内での待ち時間は他の隔離対象者を待つため・・と説明されたが、
結局チェックインは1人ずつしかできない体制のため、遅々として列が進まない。
20名ほどの対象者に対し1時間以上を要した挙句、昼の12時30分にようやくチェックインすることができた。
朝9時の入国から3時間半、生産性は正真正銘ゼロだ。こんなところでおおらかな国民性を出さないでほしい。
入室に際し、ホテルでの過ごし方や保健省からの案内、州政府および警察からの書面を受け取り部屋に案内される。
ポーターを務めてくれた陸軍の女性から、Enjoy your quarantine、と明るく声を掛けられたので、極めて朗らかにありがとうと返した。私は常識人だ。
斯くして2週間に亘る隔離生活が幕を開けた。
初日の食事、および数時間を過ごした所感は次稿にて。
はじめに
概要
2021年4月下旬から、オーストラリアへの出張を命じられました。
コロナ禍における海外出張もようやく解禁されつつありますが、
やはり2週間に亘る隔離生活はなかなか体験できるものではないと考え、ここに記します。
私について
都内一般企業に勤めています。業として筆を執ったことはありません。
ブログ内容について
主に隔離生活のレポートを挙げますが、個人的な所感を含みます。
スケジュール
04/18(日) 日本を出国
04/19(月) オーストラリア入国・隔離生活開始
05/03(月) 隔離ホテルから解放
以降は現地事務所に移動し勤務する予定です。
それでは別稿にて。